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日本医療法人協会ニュース 2022年6月号

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■巻頭言
 日本医療法人協会 常務理事 野村 明子


■特別企画
 自見はなこ先生の6年間を振り返る

■特別座談会
 井内 努・厚生労働省保険局医療課長を迎えて
  2022年度診療報酬改定を振り返る
  機能分化・連携の流れのなかで常に役割再考を

●NEWS DIGEST 医療界の最新動向
●ウクライナ支援について
●独立行政法人福祉医療機構貸付利率表
●編集後記


巻頭言
 第8次医療計画と救急医療体制の今後への懸念

日本医療法人協会 常務理事
社会医療法人社団光仁会 理事長
野村 明子

 第8次医療計画は、2024~29年度が対象となります。大きなテーマの一つは、「医師の働き方改革」です。医師の働き方改革は24年4月1日に施行され、医師の時間外・休日労働時間の上限規制が開始されます。とある大学病院では、24 年の施行を待たずに、宿日直許可を得られていない病院へは医師を派遣しないと聞いています。 大学側も、年間960時間以内(A水準)の残業時間 にすべく、派遣先病院での当直時間が勤務時間に含まれないように要請をしているわけです。

 派遣を受けている民間病院としては、宿日直許可を受ければ間題が解決するのでしょうか。確かに、宿日直許可を受ければ医師は派遣されますが、寝当直が前提であるため、当直時間帯での救急の断りが増えると思われます。今でさえ「たらい回し」「救急搬送困難」とマスコミで取り上げられていますが、24年以降はさらにそれが加速されるのではと、懸念しています。

 最近、二次救急病院で宿日直許可を受けている病院が出てきていますが、当直時間帯に患者が救箇搬送された場合、医師の対応所要時間は平均20分以内といった形で労働韮準監督署より指導されているようです。患者としてはゆっくり話を聞いてもらいたいと思っていても、それすら許してもらえなくなりそうです。

 では、宿日直許可を受けない場合はどうなるのでしょうか。大学側からの医師の派逍を受けにくくなり、当直の非常勤医師確保が難しくなります。非常勤に頼らず、常勤医師で当直をまかなう場合、当直手当てでは足りず、残業代を払わなければなりません。

 診療報酬で「時間外加算」などはありますが、当直の残業代を補うには十分ではありません。多くの病院が当直手当ての支給のみで、所定の計算での残業手当ての支給はされていないはずです。当直手当てなど処遇に不満がある医師がいれば、病院としては"爆弾''を抱えているようなものです。いつ労基署に駆け込んで、追加の残業 代を請求されるかわかりません。そのような綱渡りの状況で、病院経営がなされていくことになるのです。

 宿日直許可を受けるか、受けないか・・・いずれを選択しようと、民間病院としては、イバラの道になるはずです。医師の絶対数が足りないなか、すべての病院が残業時間を960時間以内にして宿日直許可を受けることには、無理があるのではないでしょうか。

 救急医療体制の確保は、第8次医療計画では重要な論点の一つです。医師の働き方改革と切り離して考えることはできません。厚生労働省には、ぜひとも民間病院の救急の実態を知っていただき、救急体制の崩壊を招かないようにしていただきたいものです。


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