TEL:03-3234-2438e-mail:headoffice@ajhc.or.jp

日本医療法人協会ニュース 2022年7月号

協会ニュース一覧へ

■巻頭言
 日本医療法人協会 理事 牟田 和男


特別報告 令和4年度定時総会
  次回のトリプル改定は勝負の時 一致団結して前進あるのみ


厚生労働省作成「医療機関の宿日直許可申請に関するFAQ 」について

■特集企画  世界情勢と病院の 経営コストヘの影響
 インタビュー 真野俊樹
  (多摩大学大学院特任教授/中央大学大学院戦略経堂研究科教授)
 現場の声
  1)西村 亮彦(社会医療法人大雄会 法人本部長)
  2)小森 直之(日木医療法人協会 副会長/医療法人社団恵仁会 理事長)
  3)田野倉浩治(医療法人社団永生会永生病院 事務部長)

■EVENT Report
 1)医療機関における光熱費(電気・ガス・燃料)に関する要望
 2)入院中の食事療養に必要な費用に関する改正要望書
 3)令和5年度予算概算要求に関する要望

●ウクライナ支援について
●独立行政法人福祉医療機構貸付利率表
●編集後記


巻頭言
 新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関する私感

日本医療法人協会 理事
医療法人社団誠和会牟田病院 理事長
牟田 和男

 2022年6月17日、政府は内閣官房に感染症危機管理庁を創設することを決定した。今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対する危機管理の不全に鑑み、その司令塔を設置するという。日本版CDCの創設、賛成である。

 この半世紀、世界的には鳥インフルエンザ、SARS、MARS、エボラ出血熱等の重篤な新興感染症の流行に悩まされてきた。SARSは中国広東や台湾高雄で、MARSは韓国で猛威を振るったにもかかわらず、連よくわが国には波及しなかった。当時、福岡県は台湾や韓国に近いため渡航者も多く、それらの正体不明のウイル ス侵入の可能性に緊張したことを覚えている。

 今回の新型コロナではどうだっただろうか。 最初、中国武漢で発生したにもかかわらず、当事者はその事実を隠蔽し情報公開を躊躇した。また、WHOの初期対応にも問題があり、当初、人の往来の制限、人から人への感染、マスク着用の必要性等を否定した。現代社会は、国際的に人とモノがダイナミックに移動する環境にあ る。それゆえに、初動の不手際によって、この一地域の感染症が瞬く間にパンデミックに進展してしまったのは残念なことであった。しかも、 誰しもが、このウイルスがここまで強い感染力と毒性を有し、これほど社会にダメージを与えるとは予測できなかったのも事実である。

 従来から地勢的に新興惑染症侵入のリスクが高い欧米諸国は、検査と治療薬の開発を継続していたため、即座にこのウイルスに特異的な検査(PCR)を普及させ、1年弱で治療薬(モノクローナル抗休、mRNAワクチン等)の開発に成功した。おかげで、2年後の今、感染の恐怖も鎮静化し、ようやく元の日常に戻りつつある。

 今回の騒動で、わが国の技術開発力だけでなく、緊急時の即応体制の劣化が露わになった。 戦後、法定感染症等の発展途上国型の疾病群は著しく減少し、その必疲性と採算面から感染症病床は廃止されてきた。実際、200万都市の福岡市には、公的な感染症専用病床が極めて少なく、結核患者の治療にさえ苦慮している。

 本来、感染症予防は政策医療の対象であり、国家運営の基本である。感染症専用病床は即時対応の場として公的に常置すべきで、その診療レベルと対処能力維持のため必須であり、感染拡大時に応召する病院の職員教育の場としても必要である。

 今回のパンデミックでは、民間病院はその診療においてコロナ病床、発熱外来およびワクチン接種など貢献度は高く、地域医療の中心的存在であることが再認識されたと考える。ぜひ、その司令塔の政策決定に、地域医療の最前線に立つ臨床医の意見が反映されるように、当協会を含む病院団体の強い関与を期待したい。


特別報告 令和4年度定時総会
  次回のトリプル改定は勝負の時 一致団結して前進あるのみ

 日本医療法人協会は6月3日、令和4年度定時総会を東京都内で開催した。新型コロナウイルス感染症による経営への影響がまだまだ厳しいなか、加納繁照会長は中小規模の民間病院の苦労を労い、必ずしも補助金等の恩恵を受けているとは言えず、これらの病院の働きが次の診療報酬改定に向けてきちんと評価されるよう、引き続き検討・提言していく所存であるとした。


数値というエピデンスを政府に示し 診療報酬にきちんと反映を

 冒頭の挨拶において加納繁照会長は、新型コロナウイルス感染症の拡大で病床がひっ迫した危機的状況のなか、日本の医療崩壊を救ったのは中小の民間病院であると述べ、コロナ禍の2年間における民間医療機関の医療従事者たちの活躍を褒めたたえ、苦労を労った。そして、「コロナ禍における民間病院の努力をしっかりとデータ化し、エビデンスを政府に提出して診療報酬に反映するよう提言することが重要だ」と強調した。

 理由として、''民間病院はコロナ対応が不十分'' と一部のマスコミで報道され批判にさらされたことに触れ、「たとえば大阪府では、第5波での軽症から中等症の新型コロナ患者の受け入れ数は民間病院が全体の6割を占め、重症患者の対応も民間病院が4割近くを占めていた。また、東京都でも、設置主体別新型コロナ延べ入院患者数は民間病院が2万732人と最も多く受け人れていた。その他のさまざまなデータを分析してみると、コロナ禍で重嬰な役割を担ったのは民間病院であることが浮き彫りになった。それにもかかわらず、マスコミによるイメージが先行して批判の矛先の対象になってしまうのを避けるには、やはり"正しい事実'' を知ってもらうことが一番大切である」と論じた。(→参考資料

 そのための対策として、「今後もわれわれのコロナ禍における活躍をきちんとデータ化し、客観的なエビデンスとして政府へ示していきたいと考えている」と述べ、「データ収集には会員の皆様のカが必要不可欠。調査票やアンケートなどにお力をお借りしたい」と会員の協力を求めた。


食材料費や光熱水費の大幅な負担増 喫緊の課題として政府に提言

 政府に対するもう一つの提言として加納会長は、 食材料費や光熱水費の上昇が民間病院の経営を圧迫していることについてもきちんとデータ化し、エビデンスを携え政府に訴えていくことの必要性を挙げた。まだまだ予断を許さないコロナ情勢や、ウクライナ侵攻に端を発する食料危機やエネル ギー問題に言及し、「食材料費や光熱水費の大輻な負担増は喫緊の課題である。現在の公定価格のなかで病院を運営していくことが一層厳しくなっている」と述べた。

 世界情勢による物価上昇が診療報酬に反映された過去の事例として1973年のオイルショックを挙げ、当時特例として1年に2回の診療報酬改定が行われ、まず2月に19%、その後物価の異常な高騰が進んだなか10月に16%と、年間で計35%の診療報酬アップがなされたことを紹介し、昨今の情勢も過去のそういった危機的状況に酷似している点を指摘した。

 また、入院時食事療養費も、一般的なケースでは1食当たり640円と、この四半世紀据え置きになっていることに触れ、材料費や調理にかかる人件費を考えると、採算が非常に厳しいと述べた。たとえば、ホテルなどのコロナ対応の食事提供費は1食当たり 1500円であり、その差は非常に大きいと強調した。

 3つ目の提言として、現在国がつくろうとしている医療法人の事業報告書等に関する電子開示システムヘの懸念を示した。届け出内容が今まで以上に細かくなり、役員報酬や医療職の人件費の記載までもが義務化され、さらに、従来はある程度身分等を示したうえでの「閲覧」とされていたものが、「インターネット上での公表」となることが想定されると説明。「インターネット上で役員の報酬や医療職の給与の中身まで公表されるとなると、それらの情報がどのような形で使われるか予測できず、いったん流布すると制御が不可能になってしまう」と、その危険性について警告した。

 「''情報開示''という名目で、いきすぎた詮索や営業活動、ランキングづくりなどにも利用されかねない。もし、医療保険財政の健全化・透明化などのために事業・財務等の公開が必要なのであれば、医療法人だけでなく、国公立病院や株式会社が多い保険薬局、訪間看護ステーションなどにも要求しなければならないはずだ。なぜ医療法人だけが要求されるのか」と苦言を呈し、今後も、同システムについて異議を唱えていくことを再確認した。

 最後に加納会長は、「次の、医療・介護・障害のいわゆるトリプル改定となる報酬改定は、われわれの勝負の時であり、引き続き一致団結して戦い前進することが必要不可欠だ」と力強く述べ、講説を終えた。 


~ご意見・ご感想をお寄せください~

 より良い誌面づくりのためにも、会員をはじめ読者の皆様からのご意見・ご感想をお待ちしております。宛先は事務局までお願いします。 (Eメール:headoffice@ajhc.or.jp

アクセス

東京都千代田区富士見
2-6-12 AMビル3階
TEL:03-3234-2438
FAX:03-3234-2507
E-mail:
headoffice@ajhc.or.jp