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日本医療法人協会ニュース 2025年9月号

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■巻頭言
 日本医療法人協会 副会長
 医療法人恵仁会 なぎ辻病院 理事長 小森 直之


■特集
 医療法人が取り組む高齢者救急医療
 総論 高齢者救急医療の現状と実践
  日本医療法人協会副会長/社会医療法人慈生会等潤病院理事長・院長 伊藤雅史
 事例① 生活全般を視野に協働を展開
  日本医療法人協会常務理事/医療法人済衆館済衆館病院理事長 今村康宏
 事例② 院内文化を醸成し協働体制を確率
  日本医療法人協会常務理事/医療法人聖峰会田主丸中央病院理事長・院長 鬼塚一郎

■日本医療法人協会 令和8年度税制改正に関する要望書

●第40回全国医療法人経営セミナー開催のこ案内
●NEWS DIGEST
●独立行政法人福祉医療機構貸付利率表
●編集後記


巻頭言
 病院建て替え危機と 地域医療を守るための道筋

日本医療法人協会 副会長  
医療法人恵仁会なぎ辻病院 理事長 
小森 直之

 この度、副会長を継続させていただくことになりました。伊藤新会長のもとでも、医療界のために全力で取り組んで参ります。

 昭和後期から建設された病院がすでに建設後30年以上となり、建て替えを検討する施設も増えています。しかし、その最大の障壁は建築費の高騰です。厚生労働省によれば、病院・診療所の1平方メートルあたりの建築費は2014年の26万円余りから、2024年には46万円余りと約1.8倍に上昇しました。特に都市部では用地確保も難しく、病院の存続を含めた経営判断が迫られています。

 これに加え、物価高による医療資材費の上昇や賃上げ、人材紹介会社への手数料増加などが経営を圧迫し、赤字が常態化して いることも建て替えの妨げになっています。2024年度の診療報酬改定はプラスになった分もインフレの影響を大きく受けて実質的にはマイナス改定となってしまい、経営環境は一層厳しくなりました。40歳以下の医師や医療従事者への賃上げ原資は確保されたものの、病院を支える事務職員は対象外で、最低賃金引き上げ分は病院負担です。十分な医療収入が得られず、給与水準も上がらないことで、職員にとって魅力的な職場環境を維持できません。その結果、人材は高給の職場や医療界外へ流出し、慢性的な人手不足が続きます。雇用確保のために高額な紹介会社を利用せざるを得ず、経営悪化の悪循環が生じています。こうした状況を断ち切るためには、紹介手数料の上限設定や短期離職への違約金制度導入など、制度的な是正が急務です。

 病院建て替え問題は、単なる施設更新にとどまらず、日本の建築技術継承にも深く関わる課題です。新規建築の減少は、病院建築特有の設計・施エノウハウを持つ技術者の減少に直結します。大型医療機器の搬入を考慮した動線計画や、院内感染防止のための換気・ 空調設計など、高度で特殊な技術が求められる分野ですが、施工機会が減れば技術の継承は途絶え、いざ建て替えが必要な時に対応できない恐れがあります。

 こうした厳しい状況の中でも、私たちが第一掲げるべきは「患者に寄り添った優しく丁寧な医療」を守り続けることです。災害時には、病院は地域の最後の砦となります。地域に医療インフラが在ることで、その地域の人口減少が食い止められ、結果として地域が守られます。今ある病院をどう守り、持続可能にしていくかは、未来の日本をどうしていくかと同義だと思います。

 諸問題を多角的に捉え、確かな改革と継続的な支援の両輪で、次世代に誇れる医療体制を確実に残していかなければなりません。引き続きよろしくお願い申し上げます。。


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